君の名を呼んで
勘違いと、思い込みと、回り道。
そんなものを経て、やっと私達は隣に居る。

「……だいたい城ノ内副社長が紛らわしいんですよ、全体的に!」

「人のせいにするな、馬鹿。俺だってお前には振り回されっぱなしなんだからな」

……いつですか!
いつなんどき!?


納得いかない私の前で、また煙草に火を点ける彼。
憎たらしいほど格好良い……なんて思ったのは秘密だけど。

私は彼の顔を見つめて、静かに言う。


「私、“コウ”の写真を見ました。……あなたの」


あのパーティで出版社の人が言っていた雑誌は、やっぱりうちの会社の資料室に眠っていた。
それに載っていた皇はーー


「気絶するほどイイ男だったろ」


城ノ内副社長は一瞬視線を揺らしたものの、軽口で返してくれた。


「そうですね。……私は今の傲慢で遠慮のない鬼畜なあなたのほうが魅力的だけど」

「なんてこと言いやがる、コラ」

「でも“コウ”の城ノ内副社長も格好良かった。あんな素敵なあなたも、認めてあげないともったいないですよ」

そんな私の言葉に、副社長はふ、と笑った。

「お前は俺をその気にさせる天才だな」

「その気ってどの気ですか」


……ん?
な、なんか私今、身の危険?


綺麗なその指が、私の頬に触れるーー
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