君の名を呼んで
「あはは、ありがとうございます」

曖昧にやり過ごそうとした私の隣ですずが何故か得意げに言う。

「ダメダメ!雪姫ちゃんには、すっごい格好良い彼氏居るんだからね!」

「えっ!」

蓮見君が私を覗きこんだ。


「もしかして、二ノ宮さん?」

朔の名前が出たことに慌てて否定する。

「違うよ!」

「じゃあ、誰?」

畳み掛けるように聞いてくる蓮見君。


か、顔近いんですけど。
てゆーか、こういう時こそあのマネージャーの出番でしょ?
なんで居ないのかしら。

こちらの困惑なんて構わずに、蓮見君は私を問い詰める。


「ねぇ、雪姫さん。雪姫さんの彼氏ってどんな人?俺よりイイ男なの?」


う、どうしよう。
ウチの会社の副社長と付き合ってるなんて、きっと城ノ内副社長にとってあまり外聞よくないよね。
社員に手をつけたとか、どこでどんな噂になるか分からないし。
悪名高いあの人のことだから今更かもしれないけど。


「うーん、どうかな。でも私にとっては大事な人だよ」

彼のプライドを傷つけないように、やんわりとそう言った。


蓮見君が、妙に鋭い目をして私を見ていたことなんて、気づきもせず。
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