君の名を呼んで
どこまでも気に入らない
「桜里の嘘つき」
タクシーに乗り込んだとたん、私は隣に座る男性を睨んだ。
「つき合った覚えなんて全くないんですけど!」
桜里は涼しい顔して私の頭をポンポンと叩く。
笑いを堪えるような顔をして、口を開いた。
「う~ん、日本語って難しいね。海外暮らしが長いと、つい適切な表現を忘れてしまうことがあるんですよ」
絶対嘘だ。
確信犯のクセに!!
「それに僕にとってはそれくらい、雪姫のことが大事だってことですよ。
……わかってるよね?」
どこまでも優しい表情で、そんなことを言われたら、逆らえるはずもない。
元カレなんかじゃないけど、桜里は私にとって、確かに誰よりも大切な人の一人に変わりないんだから。
彼を見た時から疑問に思っていたことを先に聞いてみる。
「桜里、いつ帰国したの?」
「さっきです。雪姫に早く会いたくて会社に電話したら、ここだと言われたので」
以前なら嬉しかったはずの台詞も、今はなんとなく素直に聞けない。
だって、桜里が理由も無しに急に帰国するなんて、ありえないんだもの。
「なんであんなこと言ったの」
皇を責めるような、煽るような。
「怒ってるんですよ。あんな男には雪姫を任せられませんから」
ちらりと横目でこちらを見下ろす桜里。
「だからって、元婚約者だの、元カレだなんて嘘……」
「おや、昔はよく『桜里と結婚する~!』って言ってくれてたじゃないですか」
「そんなのず~っとず~っと昔の話でしょう!!時効よ、時効ッ!!ていうか、それ以前の問題……」
彼とポンポンと言い合いながらも。
ふと、不安がよぎる。
タクシーに乗り込んだとたん、私は隣に座る男性を睨んだ。
「つき合った覚えなんて全くないんですけど!」
桜里は涼しい顔して私の頭をポンポンと叩く。
笑いを堪えるような顔をして、口を開いた。
「う~ん、日本語って難しいね。海外暮らしが長いと、つい適切な表現を忘れてしまうことがあるんですよ」
絶対嘘だ。
確信犯のクセに!!
「それに僕にとってはそれくらい、雪姫のことが大事だってことですよ。
……わかってるよね?」
どこまでも優しい表情で、そんなことを言われたら、逆らえるはずもない。
元カレなんかじゃないけど、桜里は私にとって、確かに誰よりも大切な人の一人に変わりないんだから。
彼を見た時から疑問に思っていたことを先に聞いてみる。
「桜里、いつ帰国したの?」
「さっきです。雪姫に早く会いたくて会社に電話したら、ここだと言われたので」
以前なら嬉しかったはずの台詞も、今はなんとなく素直に聞けない。
だって、桜里が理由も無しに急に帰国するなんて、ありえないんだもの。
「なんであんなこと言ったの」
皇を責めるような、煽るような。
「怒ってるんですよ。あんな男には雪姫を任せられませんから」
ちらりと横目でこちらを見下ろす桜里。
「だからって、元婚約者だの、元カレだなんて嘘……」
「おや、昔はよく『桜里と結婚する~!』って言ってくれてたじゃないですか」
「そんなのず~っとず~っと昔の話でしょう!!時効よ、時効ッ!!ていうか、それ以前の問題……」
彼とポンポンと言い合いながらも。
ふと、不安がよぎる。