君の名を呼んで
死にそうなのは俺の方

BNPは正式にエアリエルの仕事を請けることになって、私たちはより一層忙しくなった。
だから映画の撮影も空き時間なんて無く、あの日から会わずにいられたんだ。


ーー蓮見貴雅に。


その日、朔とすずが予定表を片手に私を呼んだ。

「雪姫、今日は来なくてもいいよ?別の奴に任せるから」

今日は蓮見君との撮影ーー。


「大丈夫だよ。それにエアリエルの方で皆、手いっぱいだもん。空いてるマネージャーも居ないし」

いつも朔についているマネージャーも、モデルの手配にかり出されているから、今は映画の撮影だけは、私は朔とすず、二人の担当をしていた。


「大丈夫だよ」



正直、まだ怖かった。
彼に会うのは。


けれど、私は一つだけ、気になることがあって。
それを確かめなくちゃいけないと思ったんだ。

撮影現場に入った瞬間に、私は蓮見君を見つけた。

やっぱりアイドルだけあって、目立つ。
芸能人はオーラが違う、って言うけど、本当にその通りだと思う。

朔もすずも、蓮見君も。
人を惹き付ける力を持っている。

それを守って、更に輝かせてあげるのが私たちの仕事。

蓮見君にも、輝いていて欲しい。


蓮見君がこっちを振り返って、私を見て、凍り付いた。
小さく頭を下げたなら、蓮見君は一度躊躇うような表情をして、けれどこちらへ近寄って来る。

つい、身を固くする私の前に、朔がさりげなく立って庇ってくれた。
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