君の名を呼んで
「だから、ごめん、雪姫さん」

蓮見君の心からの謝罪を、私は信じる。

「うん。好きになってくれてありがとう。でも、ごめんなさい」


私には、皇がいる。
私には、彼が必要。


蓮見君は一瞬だけ辛そうにして、けれど顔を上げて私を見た。


「雪姫さん、うちの社長には気をつけて。本気で城ノ内さんを欲しがってるみたいなんだ」


ぎくり、と。
あの芹沢社長の姿が脳裏をよぎる。


「芹沢社長はーー」


蓮見君が口を開いた瞬間、



ーー“ガラガラガラッ!!”



とものすごい音がして、咄嗟に音の方を見ると。
そこに立て掛けてあった建材が、私めがけて降って来たーー



「きゃああああっ!!」



何かを思う前に上げた悲鳴はその音に掻き消されて。

スローモーションのように

「雪姫さんっ!!」

蓮見君が私に腕を伸ばすのを見たのが、最後。



私の目の前が真っ暗になったーー
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