君の名を呼んで
なにが起こったの?

私が意識を失っていたのは一瞬。
気がつけばスタッフが大声を上げながら走り寄って来て、慌てて建材をどかしてゆく。

傍で起こっている恐慌にもまるで現実味無く、声が遠くに聞こえる。


「雪姫!」

駆け寄って来た朔が私を抱き上げて、

「怪我は!?」

と血相変えて聞く。


「私は……」

反射的に首を横に振りながら、思う。


わたしは。


じゃあ、はすみくんは?



「貴雅!!」
「蓮見君!?」

蓮見君のマネージャーさんとスタッフの切羽詰まった声に、そちらを見れば。


「蓮見君……」


建材の下敷きになった蓮見君と、その身体から滲み出す、赤が見えて。


「蓮見君っ……!!」


私はあの建材の真下にいたのに、ひとつも当たってはいなかった。
何かに身体を押されて、倒れ込みながら見たのは、私に向かって伸ばされた腕と、切羽詰まった彼の瞳。

ーー蓮見君の。


私のせいだ。

そんな言葉が頭をぐるぐると回って。


私はただ、悲鳴と共に、蓮見君を呼び続けた。
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