君の名を呼んで
「蓮見君の様子を見たい」

と皇にお願いして、私は彼と一緒に蓮見君の病室へ向かう。

けれど病室の前まで来た時、そこに立ちはだかる芹沢社長と、硬い表情をした真野社長を見て、私達は足を止めた。

「あら、お姫様の登場ね」

芹沢社長は私を見て、冷たく笑う。
その顔につい気圧されて、戸惑う私に、彼女は高圧的に言葉を投げた。


「貴雅はあばらを折る重傷。映画は撮り終えたとはいえ、予定してたコンサートもテレビもすべてキャンセルよ。
何でもあんな場所につれだしたのはそちらのマネージャーさんだとか。貴雅が怪我をしたのもあなたを庇ってだと聞いているわ。どう責任取って頂けるのかしら」


「……!」


事の重大さに、息を呑んだ。
そんな怪我を負わせてしまったなんて。

私は彼女に頭を下げた。

「申し訳ありません……!あの、蓮見君に会わせて下さい」


この目で無事を確かめたい。
ちゃんと、ごめんなさいって、ありがとうって伝えたい。

けれどそれは嘲りの視線と共に拒まれる。

「その必要は無いわ。二度と彼に近づかないで。あなた自分の立場を自覚してる?」

芹沢社長は近くにいた蓮見君のマネージャーに、書類を持ってこさせた。

「ジェイズの蓮見貴雅が活動停止よ。損害賠償は、ざっと三千万」


頭が、真っ白になった。
彼女の言葉は、私の許容範囲を一気に超えて。


何が起こってるの?


「これでもだいぶおまけしてるのよ。払えないなら、そうね」

芹沢社長は微笑んだ。

どこまでも冷たい、その表情ーー。


「城ノ内さんが欲しいわ。
うちの会社に。私の片腕として」


ああ、何もかも、真っ白……。
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