君の名を呼んで
***

ランウェイを見た瞬間。

皇が凍り付いたのが わかった。

名前を呼ぶことも
モデル時代の写真を見ることも
許してくれていた彼が。


私の目の前で、プライドの高い彼が、立ちつくした。


“コウ”の苦しみは深すぎて。
私には何も言えなくて、苦しかった。



それは本番の会場の下見に行った日のことで、今でもその瞬間を思い出して泣きたくなる。
本当は、私には何一つ、彼のためにできることなんて無いのかもしれないと思ったんだ。


BNPはそんな彼が自分で築き上げた場所。


だからこそ、皇にーー城ノ内副社長に、BNPを離れるなんて、そんなことさせられないと思ったのに。


桜里は、彼に何をさせたいんだろう?
< 160 / 282 >

この作品をシェア

pagetop