君の名を呼んで
「冗談でしょう!?だってあなた幾つですか?どう見たって20代か、30歳前後……!」

心底驚いている朔の問いに、桜里が答える。

「これでも僕は41歳ですよ。雪姫は僕が18歳の時に産まれた子です」

さすがに皇が、動揺した面持ちで私に問う。

「おい、雪姫……」

「皇、前に言いましたよね。鷺って漢字が難しくて、覚えられないって。だから桜里も、海外に行ってから本名を名乗らないんです」


そう。
白鳥桜里は、本名 白鷺桜里。

れっきとした、私の父親ーー。


「まさかの親子オチ……」


真野社長が茫然と呟いた。

「言っておきますが、これはエアリエルのトップシークレットですよ。口外したなら、賠償金は9桁に登りますから、お忘れなく」

あんなアイドルの若造なんて目じゃありません、と変な例えをしてシーッと人差し指を立てて悪戯っぽく笑う桜里。

私が皆に言えなかったのも、まさにそれが理由。


「あんな、思わせぶりに愛してるだの何だのと……」

皇が怒りに満ちた目で、ふるふると拳を固める。
あああ、怒ってる怒ってる。

けれど見た目は私の兄程度にしか見えない父は、涼しい顔で皇を鼻で笑う。

「面白かったもので。君がやきもきするのが。それにほとんど嘘は言ってませんし」

「殴らせろ。二、三発で許してやる」

しれっと言う桜里に、なんだかドス黒いオーラを発してる皇を、真野社長が抑えこんだ。


「城ノ内!堪えて!」

「放せ、真野!てめ、雪姫も雪姫だぞ!」


うう、ごめんなさい。
< 171 / 282 >

この作品をシェア

pagetop