君の名を呼んで
今すぐ抱き締めたい
side 皇


「雪姫の母親ーー美雪は僕の幼馴染でした」


白鳥桜里が俺を連れ出して二人きりになると、そんな話を始めた。

化け物級に若いその整いすぎた容姿に惑わされそうになるが、よく見れば確かに雪姫との相似が所々に現れている。
落ち着いたその雰囲気は、確かに年相応なのかもしれない。
黙っていれば極上の高級品だが、外国の血が混じっているだけの、ごくごく一般家庭に生まれたのだという。


「美雪は二つ年上でしたけど、僕は子供のころから彼女が好きで。彼女が僕の子を妊娠した時は、凄く嬉しかったんです」

彼は遠くを見つめて、目を細める。


「僕は高校生で、モデルも始めたばかり。何一つ満足にこなせない子供のくせに、周りの反対を押し切って結婚した。
案の定すぐに自分のことも見失って、仕事も無くなって。もがき続けて必死で掴んだチャンスは、海外でのモデル活動でした」


けれど、それは、家族を捨てること。

エアリエルの条件は、白鳥桜里の家族を一切認めることはなかった。


「美雪はそんな僕を見兼ねて、離婚してくれたんです。僕に、イギリスに行けと言ってくれた。だから僕は独りで日本を出た。
……美雪と、雪姫を捨てて」
< 173 / 282 >

この作品をシェア

pagetop