君の名を呼んで
私は二人の間に割り込んだ。

「もう、いい加減にして下さい!似たもの同士なのよ、アナタ達。皇も、つまんない冗談言わないで下さいよ!」

すると皇は顔をしかめて、桜里に呟く。

「何この生き物、どこまで鈍感?あんた育て方間違えたんじゃねぇの」

「それを言うならBNPの社員教育が、甘すぎなんじゃありませんか?危機感足りなさ過ぎですよ」


な、何なのよ。
さっきまでいがみ合ってたくせに、二人してヒソヒソと感じ悪い!


「まあ、それくらいの方が僕は安心です。城ノ内君に泣かされたら、いつでも迎えに来ますからね」

桜里がそう言って、私の頬にキスした。

「おいコラ、おとーさま。何やってくれてるんだ」

皇が不満タラタラな顔をする。

「海外暮らしなんだから、仕方ないでしょう。習慣なんですよ」

それにしれっと返す桜里。
何か、この二人いいコンビだと思うけどなあ。


「ではまたね、雪姫。……ついでに城ノ内君」

「早く帰れ。……いや、待った」


ふと、皇が皮肉気な微笑みを引っ込めて桜里を見た。
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