君の名を呼んで
**
会社に戻った私は、一瞬にして気持ちが沈む。

受付嬢、総務のおねーさま、アイドル、モデル。
社内の綺麗どころが、囲んでいるのは城ノ内副社長。

……つまりは私の彼氏だけど。


「城ノ内副社長~なんでですかあ~?」
「最近全然つき合ってくれないし」
「ねえ、いいでしょう?飲みに行きましょうよ」


く、ロビーでやるな!
お客様来たらどうすんのよ受付嬢!
仕事をしなさい、仕事を!

もやもやを隠して横目で見ながら、その横を通り過ぎようとする。


「雪姫」


ぎくり。

低く響く声は、間違いなく彼のもの。
けど今は、今は呼ばないで欲しかった。

お姉様方の、お嬢様方の視線が!
視線が怖すぎる!!


「な、なんでしょう、城ノ内副社長。あの、私、社長に呼ばれていますので」

じりじりと後退しつつ、顔だけ向けて見たなら。
女の子たちに両側から腕を組まれている彼が目に入って。

……ムカ。

思わず、足が止まる。
< 192 / 282 >

この作品をシェア

pagetop