君の名を呼んで
「二ノ宮先輩、まだ雪姫ちゃんのこと、好きなの?」

雪姫ちゃんはもう、城ノ内副社長の彼女なのに。
(あたしは認めてないけどね!)


あたしの言葉に、彼は一瞬息を呑んで。
それがなによりの答えだった。


「……報われないですよ、そんなの」

辛い恋じゃん。

けど二ノ宮先輩は、優しく、優しく笑った。


「いいんだよ。……雪姫が笑ってれば」


ああ。
その微笑みに、なぜかものすごく胸が締め付けられて。
ぎゅうううっと、痛みを感じた。

恋人役で共演したって感じなかったのに。
こんなささいなことで、目を奪われて。


「二ノ宮先輩は、馬鹿です」

「何だよまたいきなり。喧嘩売られてるの俺?」


馬鹿です。


「そんな恋は、忘れちゃった方がいいです。あなたがそんな顔してると、雪姫ちゃんが気にするんだから」
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