君の名を呼んで
愛してる
**
「もう出社できない。
きっと明日はデスクにゴミとか撒かれて、書類隠されちゃったりするんだわああ」

「今時そんなことあるか、馬鹿」


オフィスに戻って荷物を取って来た私達は、すぐに駐車場に降りて皇の車に乗り込んだ。
いつまでも残ってたら皆になんて言われるか。
それでなくても明日が来るのが怖い。

私は涙目で皇を見上げる。

「城ノ内副社長にはわからないんですよお!あなたのことが好きな女性陣がどれだけいるのか」

彼はエンジンをかけながら、ちらりと私を見た。

「そんなものは承知の上だ。俺はモテるからな」

くっ!
ほんとのことだからまたムカつき度が……っ!


「でも、本当の意味で俺を好きになってくれたのは、お前だけだな」

「え……?」


ぽつりとこぼされた言葉。


「俺の全部を受け止めて、俺に依存しないし、させない。壁を作ってもぶち破ってくる。自分のことは後回しで俺のことばかり救おうとする」


苦笑まじりにひとつひとつ挙げられて。


「……おこがましい、ですよね」

恥ずかしくて俯く。


皇の指が私の額を弾いた。



「そこに惚れた、って言ったよな?俺」



ーー!!
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