君の名を呼んで
「あ~全く、どいつもこいつもムカつかせやがって」

城ノ内副社長が苛々しながら、ドカッとデスクの上に足を乗せた。

元モデルと噂の彼は、整った容貌にスタイル抜群の長身。
黒髪に黒いジャケットに黒の細身のパンツで、煙草をくわえて尊大に座る姿は結構な迫力がある。

しかしねぇ、告白されてそんな風に言うの、アナタくらいです。

私の視線に彼は半眼でこちらを睨んだ。

「あ?何だよその目。言いたいことがあるなら言えば?ぺーぺー平社員の梶原雪姫」


性格と口の悪さも天下一品だな~。
だけど、フンっ!
私はそんな肩書きでメゲるほど、繊細にはできてない。


「では遠慮無く。あんな言い方無いと思いますけど」

オフィスは『またか』と苦笑を含んだ雰囲気に包まれる。
副社長は私を一瞥。


「俺は下の名前で呼ばれるのが嫌いなんだよ」

「あなたそんな、クソ長い名字に反比例した、呼びやすい名前しといて何ワガママ言ってるんですか。名前が尊大だと態度も武道館並みですか。東京ドーム何個分?」

「口悪いなあ、雪姫。せっかく可愛い顔してんのにな。どうだ?マネージャー辞めてAVでも出てみたら」

「残念ながら他人様にお見せできるような、立派なものは持ってませんから。ところで人には呼ぶなっつっといて、自分は呼び捨てですか、馴れ馴れしい」


副社長にはとことん冷たい、梶原雪姫、23歳。
入社三年目、平社員のクセに恐いもの無しの副社長のツッコミ担当。

それが私。


……不本意ながら。
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