君の名を呼んで
まっすぐに見つめた彼の横顔に、柔らかな笑みがのぼって。


「お前は、どうしてそういう可愛いことを運転中に言う?家に帰るまで待てなくなるだろが」


車がいきなり路肩に停められて。
皇が私にキスをした。
触れるだけのものではなく、ちょっと熱のこもった、それ。
合わせられた視線。

どうせ、いつもみたいに『知ってる』って言うんだと。
そう、思っていたのに。



「俺も、お前を愛してる。……雪姫」



ーー!

真剣な瞳と、初めて聞いた言葉に、咄嗟に反応出来ず。
言葉より先に零れたのは涙だった。

「……っ」

「普段強気のクセに、お前は本当によく泣くよな」

皇の両手が私の頬を包み込んで、その親指が涙を拭う。

「だって、ズルいですよ……。いつもは絶対言わないのに」

私がそう口に出すと、皇はまた私にキスをした。

「仕方ないだろ。お前が可愛いのが悪い」


何ですか、それは。

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