君の名を呼んで
でも、叩き落とした、って何?

「なんで?兄弟でしょう?」

私の問いを嘲笑うように、帝さんは私の髪から指を滑らせた。


「俺も元モデルなんだよ?“コウ”にあっさり居場所を奪われて、早々に見切りをつけたけどな」


——知らなかった。

彼の指が私の服の襟を空けて、首筋を撫でる。
その視線が何かに気付いて、彼の目が愉しげに歪んだ。


「腹いせに皇の女をメチャクチャにしてやってからは、あいつは特別な女なんて作らなかったくせに。あの皇がこんな跡までつけるとはね」


彼の指はゆっくりと、鎖骨の上をつ、と撫でる。
帝さんが触れているのは、皇に付けられたキスマークだ。
それに気付いて、言葉の意味に気付いて、私はがくがくと震え出した。


「しかも大事な大事な白雪姫」


帝さんは歌うように囁いた。
動けない私を愉しむかのように、抱きしめるかのように、その腕を私の首に回して。


「今度はあいつ、どんな顔をするかな。ねぇ、雪姫ちゃん?」


首を傾げて私を見下ろした彼。
その笑顔は恐ろしいほど冷たくて。



「どうやって、壊されたい?」
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