君の名を呼んで
私は指一本動かせずに、ただ帝さんの深い深い瞳を見つめていた。
さっきまでの嘲りの色も、怒りも、哀しみも、何も感じない、深い色。
それはずっと前の、名前を呼ぶなと言っていた頃の城ノ内副社長によく似ていた。
「帝さんも、堕ちてるんですか?」
闇の底に。
皇を傷つけるその目で、自分にも傷をつけているの?
「雪姫ちゃん、何か勘違いしてない?」
帝さんはクスリと笑って私を覗き込んだ。
「同情?
俺がほんとはいい人かも~とか、傷つきやすい人なのね~とか、そんなおめでたい考えでいるなら、今すぐ甘ちゃんな自分を後悔しな」
そう言って、私に顔を近づける。
「嫌っ」
顔を背けようとしたら、後頭部を掴まれた。
無理矢理に前を向かされる。
帝さんは私の表情を愉しむかのように笑った。
「ほんとに、純粋でお人好しで可愛くて馬鹿な白雪姫。そこにあるのが毒リンゴだとも知らないで」
「それでも」
私は震える唇を無理矢理開く。
「あなたは皇の兄です。私の大好きな人の、大事な人なんです」
帝さんの冷たい目が、更にキツさを増した。
「そんなんじゃ、つまらないな」
後頭部と顎を掴む力が強まり、
「痛い、です。帝さ……」
呼びかけた名は、押し付けられた唇の中に消えたーー。
さっきまでの嘲りの色も、怒りも、哀しみも、何も感じない、深い色。
それはずっと前の、名前を呼ぶなと言っていた頃の城ノ内副社長によく似ていた。
「帝さんも、堕ちてるんですか?」
闇の底に。
皇を傷つけるその目で、自分にも傷をつけているの?
「雪姫ちゃん、何か勘違いしてない?」
帝さんはクスリと笑って私を覗き込んだ。
「同情?
俺がほんとはいい人かも~とか、傷つきやすい人なのね~とか、そんなおめでたい考えでいるなら、今すぐ甘ちゃんな自分を後悔しな」
そう言って、私に顔を近づける。
「嫌っ」
顔を背けようとしたら、後頭部を掴まれた。
無理矢理に前を向かされる。
帝さんは私の表情を愉しむかのように笑った。
「ほんとに、純粋でお人好しで可愛くて馬鹿な白雪姫。そこにあるのが毒リンゴだとも知らないで」
「それでも」
私は震える唇を無理矢理開く。
「あなたは皇の兄です。私の大好きな人の、大事な人なんです」
帝さんの冷たい目が、更にキツさを増した。
「そんなんじゃ、つまらないな」
後頭部と顎を掴む力が強まり、
「痛い、です。帝さ……」
呼びかけた名は、押し付けられた唇の中に消えたーー。