君の名を呼んで
「ン、ンンーーッ!!」

最初の一瞬は驚愕で、
次の瞬間には拒絶で、
私は悲鳴を上げた、つもりだった。

けれど帝さんに塞がれた口からはまともな声なんて出ずに、ただ私をキッチンの奥へと追いつめる。
掴まれた頭も動かせずに、無理矢理こじ開けられた口に押し込まれた舌が、私を絡めとろうとした。


ーーなんとか、しなきゃ。


歪む視界の隅で、手を伸ばす。


必死でーー




”カッコーンッッ!!”




「……何、この仕打ち」


帝さんが呆然と呟いた。


「い、いい加減にして下さい!」


私の手には、お玉。
これで思いっきり彼の頭を殴ったんだ。


「色気ないなあ。舌噛まれるくらいは想定してたのに」

「フライパンか刃物じゃなかっただけマシだと思って下さい」

頭を押さえてぶつぶつ言う帝さんから離れて、私はお玉を構える。
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