君の名を呼んで
私は蒼白になって暴れるけれど、全く歯が立たない。
けれど彼の手は怯むこと無く私の脚を撫で上げてゆく。

「私なんか美味しくないです!ていうか食べられませんっ!」

「大丈夫。俺、珍味も大好き」


何が大丈夫なのよおおお!!?


「や、ヤダ、ってば、やめてっ」


その金茶色の髪が、私の頬にかかった瞬間ーー。





「俺のモノに手を出すなと、言わなかったか?」




低く響く、怒りに満ちた
ーーけれど私には誰より愛おしい声。


「そうだったっけ?皇」

帝さんがゆっくりと、そう言った。

その背後には、まっすぐに立ち、兄を睨みつける彼の端正な姿。


私の顔のすぐ傍で、帝さんがかすかに笑う気配がした。
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