君の名を呼んで
お前だけ居ればいい
帝さんの肩越しに見えた皇に、私は安堵のあまり、悪態をつく。

「お、遅いですよ、皇~!」

物凄く情けない顔で言う私は、さぞ間抜けに見えただろう。


「んだよ。今回はちゃんと間に合っただろ。あの娘馬鹿の変態親父に負けっぱなしでたまるか」

しれっと言う皇。

娘馬鹿な変態親父って……間違い無く桜里のことよね。
恋人の父親に遠慮無しですか。

「全然間に合ってませんよ、馬鹿ぁ」

帝さんの手から放されて、へにゃりと崩れ落ちた私を皇が抱き起こす。
それを眺めて、帝さんは笑った。

「あーあ、これからだったのに。まあいっか、味見できたし」

この、余計な発言を!


「雪姫、何された」

目を剥く皇に泣きそうになりながら答える。

「キスされて、足触られたくらいで、……きゃっ」

言いかけた私に覆い被さるように、皇がキスをした。
何度も何度も繰り返して、最後にチュ、と軽く音を立てる。

「足の消毒は後だ」

実の兄を病原菌扱いですか。

私から唇を離した皇が、帝さんを睨んでーー。


一瞬後にドカッという音と、よろめく帝さんが見えた。
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