君の名を呼んで
***

それから何日か後、私はすずの出演するCM撮影の為に、スタジオに来ていた。

「フルCGなんだって。あたし初めて」

いわゆるブルーバック(今日はグリーンバックだけど)、青い幕の前で、いかにもそこに相手が、風景が広がっているかのように演技しなきゃならない。
いまでは珍しくも無い撮影だけど、すずには初めての試み。

もちろんまだ何も映像は出来ていないから、絵コンテ台本を眺め、何度も何度も台本を読んではイメージしている彼女の頑張りに、私までついつい力がこもる。


「監督入りまーす!」

今日初めて会う監督は、CGプロダクション出身、若手のVFX監督らしい。
戦隊に出演していた私には知らなくはない分野ではあるけれど、何せブルーバック前に立っていたのは五歳。
もう覚えてもいない。
すずにアドバイスの一つも出来ないのも情けないなあ。


ーーざわめきが一瞬止んで、背の高い男性が入って来た。
その明るい茶金の髪にひどく見覚えがあるーー。


「あっらー。白雪姫と子猫ちゃんじゃーん」


軽妙な声。


「み、帝さん?」

「みっくんて呼んでよって。監督の城ノ内帝デ~ス」


帝さんはに~っこり、微笑んだ。
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