君の名を呼んで
まさか帝さんがCGクリエイターで、監督だなんて。

「モデル辞めてからパソコン漬けで、気がついたら映像の道に進んでたんだよね~。ずっと海外のプロダクションで勉強してたんだけど。とうとう自分で監督したくなっちゃってさ~」


軽くそんな経歴を語ってくれた彼だったけど、実際の現場は相当なものだった。


「だからあ!目線泳がすな!そこに対象があんだよ、想像しろ!もう一回!」

「はい!すみません!」

妥協しない帝さんと、負けず嫌いのすず。
すずは怒鳴られながらも、何度も何度も演技を繰り返した。相当頑張ってたんだと思う。
それに何より帝さんの真剣さに驚いた。

何度もリテイクを出しては、事細かく説明し、すずやスタッフと話し合って撮影を進めて行く。
自分で書いたらしい絵コンテと、改訂稿は相当な厚みがあった。
モデルとして成功出来なかったなんて言うけれど、まるでこの道が最初から用意されていたかというくらい、まっすぐひたむきに打ち込む姿。

私の彼に対するイメージが、大きく変わった瞬間でもあった。


朝から始まった撮影は、夜まで続いて。

「はい!オッケーです!チェック」

「チェックします!」

最後のカットを息を呑んで見つめて、

「はい!オッケーです!お疲れ様でしたぁ!」

その一言で、すずの涙腺が緩んだ。
しがみついてくる彼女を咄嗟に抱き締めると、周りのスタッフから拍手が沸く。

「雪姫ちゃーん」

「頑張ったね、すず。お疲れ様」


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