君の名を呼んで

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「最近すずと朔、仲良いんですよね」

私が呟いた言葉に、城ノ内副社長が答える。

「だからあいつは雑食だと言っただろ。自分に惚れてた男が、他の女見てると淋しいか？」

その手元には何冊もの資料を抱えているけれど、ページをめくるスピードはもの凄く速い。……アレでちゃんと頭に入るんだから凄い。
意地悪く言う彼を軽く睨む。

「そんなんじゃありませんよ。朔にもすずにも幸せになって欲しいし」

ズルい考えかな。


「私はどうしたって朔には応えられないから……。正直、ホッとしたかもしれません」


私が支えなきゃいけないのに、ずっと私を支えてくれた朔。
そんな彼に寄り添ってくれる女性が現れたら良いと思っていたけれど。

「すずが、ねぇ」

ずっと一緒に頑張ってきたすずは私にとっては妹みたいなもので。
複雑、でも応援してあげたいな、なんて思っていた。

私の鼻をつまんで、皇が言う。

「他の男の話ばかりしてる馬鹿女へのお仕置きと、俺にしか応えられないって可愛いこと言う女へのご褒美と、どっちが良い？今すぐ選べ」

「そ、その二択って、結局一緒ですよね！」

なんてこと言うのよ、この人は。


「それとも」

皇は不意に、私を真っ直ぐに見つめて笑った。

「イギリスか、広尾、どっちが良い？」

は？
何その二択。


唐突に出て来た選択肢にポカンと「？」マークを浮かべた私に、皇が愉しげに言い直した。


「お前の親と、俺の実家、どちらに先に挨拶に行く？って聞いたんだがな」


……え？

私は思わず手にしていたすずの台本をボトッと落としてしまった。


「今すぐ選べ」


ちょっと待って。
そ、それって。それってーー。


「はい、時間切れ。仕方ないから間を取って銀座な」


私が答える隙を与えず、彼はいとも簡単に締め切ってしまって。


「タイムアップ早過ぎます！と言うより、ナゼ銀座？どこが間？」

ますます混乱する私に、皇がニヤリと笑った。


「行けばわかる」


結局私はわけもわからずに、定時退社、皇の車に押し込まれる羽目になった。