君の名を呼んで
*
銀座に着いて、車を降りた私は、皇に手を引かれて街を歩く。
夕方とはいえ華やかなショーウィンドウと、人の多さに戸惑いながら皇を見上げるけれど、彼は黙ったまま。
なんだろう?なにかあるのかな。
やがてあるビルの前で、皇が手を上げた。
その先に居たのは。
「冴木先生……?」
私が散々お世話になっている、美形医師。
もちろん、今は白衣ではなくて、黒いロングコートに深い赤のマフラーをしている、私服姿。
相変わらず、誰もが振り返るほどのイケメンだ。
けれど私服以上にいつもと違うのは、その隣に長い髪の女性を連れていることで。
「悪いな、デート中に」
皇が言って、二人に近づいた。
「まったくですよ」
にこやかにサラリと毒を吐く美形医師を、彼女らしき女性が軽く睨む。
「玲一、失礼よ」
柔らかで透き通るようなその声に、思わずまじまじと彼女を見てしまって。
「わ、凄い、綺麗!可愛い!」
近くで良く見た彼女はとても綺麗で。
冴木先生と並ぶと、お似合いの美人さん。
これは、是非BNPに欲しいかも!
「芸能事務所とか入ってます?興味ある?」
思わず詰め寄ったなら、彼女ははにかんだように笑う。
「ごめんなさい、私は」
言いかけた彼女を遮って、冴木先生が私に言った。
「梶原さん、うちの奥さんは駄目。俺はこれでもヤキモチ焼きなので」
……お、
「奥さん!?」
冴木先生、結婚してたんだ!
そういえば結婚指輪をしてた、と思い出す。
「妻の遥です」
頬を染めて挨拶する彼女は、とても幸せそうで。
ふわりと微笑む姿が印象的だった。
にしても遥さん、凄く若い。
私より歳下じゃないのかな。
「教師やってた時の教え子なんだと。犯罪だよなあ」
私の疑問に答えた皇が、ニヤニヤ笑う。
ああ、そうか。確か冴木先生は一時期、高校の養護教諭をしてたんだっけ。
銀座に着いて、車を降りた私は、皇に手を引かれて街を歩く。
夕方とはいえ華やかなショーウィンドウと、人の多さに戸惑いながら皇を見上げるけれど、彼は黙ったまま。
なんだろう?なにかあるのかな。
やがてあるビルの前で、皇が手を上げた。
その先に居たのは。
「冴木先生……?」
私が散々お世話になっている、美形医師。
もちろん、今は白衣ではなくて、黒いロングコートに深い赤のマフラーをしている、私服姿。
相変わらず、誰もが振り返るほどのイケメンだ。
けれど私服以上にいつもと違うのは、その隣に長い髪の女性を連れていることで。
「悪いな、デート中に」
皇が言って、二人に近づいた。
「まったくですよ」
にこやかにサラリと毒を吐く美形医師を、彼女らしき女性が軽く睨む。
「玲一、失礼よ」
柔らかで透き通るようなその声に、思わずまじまじと彼女を見てしまって。
「わ、凄い、綺麗!可愛い!」
近くで良く見た彼女はとても綺麗で。
冴木先生と並ぶと、お似合いの美人さん。
これは、是非BNPに欲しいかも!
「芸能事務所とか入ってます?興味ある?」
思わず詰め寄ったなら、彼女ははにかんだように笑う。
「ごめんなさい、私は」
言いかけた彼女を遮って、冴木先生が私に言った。
「梶原さん、うちの奥さんは駄目。俺はこれでもヤキモチ焼きなので」
……お、
「奥さん!?」
冴木先生、結婚してたんだ!
そういえば結婚指輪をしてた、と思い出す。
「妻の遥です」
頬を染めて挨拶する彼女は、とても幸せそうで。
ふわりと微笑む姿が印象的だった。
にしても遥さん、凄く若い。
私より歳下じゃないのかな。
「教師やってた時の教え子なんだと。犯罪だよなあ」
私の疑問に答えた皇が、ニヤニヤ笑う。
ああ、そうか。確か冴木先生は一時期、高校の養護教諭をしてたんだっけ。