君の名を呼んで
皇が冴木先生に絡む。
どうやら二人は以前からかなり親しいみたい。

「やっと見せて貰えたぜ。散々隠しやがって」

「半年前なら絶対に会わせませんでしたけどね。今は梶原さんがいるようだし」

……素行の悪い上司ですみません。

けれど。

「なんで冴木先生を呼び出したんですか?」

私の疑問に突然皇は黙って、ぽりぽりと頬をかく。
ああ、これはーー照れてる?

少しは読めるようになった彼の顔色に、けれどあまりにも珍しい姿に、思わず首を傾げてしまう。

「俺が知ってる店を、紹介してくれって頼まれたんですよ」

ふ、と微笑んで答えたのは、冴木先生だった。

「ココの奥。話はしてありますから、ごゆっくり」

そう言って、冴木先生と遥さんは私達に目の前のビルを示した。
そのショーウィンドウに飾られているのは、キラキラ輝く、ダイヤモンドのジュエリー。


「……まさか」


茫然として。

それからじわじわ私を侵食していく、期待。


「ホンモノは、後でっつったろ。……随分遅くなったけどな」


皇が苦笑いして私の手を引いた。
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