君の名を呼んで
お前は一生、俺のもの
いつも通り、泊まりに来た皇の部屋。
夕食を外で済ませてきたから、買ってきたワインを開けておつまみを並べた。
食器も小物も、もう気兼ねなく出せるどころか、私の使いやすいように位置を変えてくれていることに気付いて、何とも言えない気持ちになる。

皇ってこういうところはマメなのよね……。

私の手元を覗き込んで、彼が呟いた。

「アスティ?甘過ぎだろ」

「好きなんですよぉ」

「お前なー。スパークリングワインなんて腹膨れるだけだぜ」

「今デブって言いました?私のこと!言いましたぁ!?」

「呑む前から絡むな、馬鹿」

軽口を叩き合いながら、いそいそと包みを開けていた私の手が止まる。


「あ……」


小さな紙袋。
皇の買ってくれたーーあの指輪。


止まってしまった私の肩越しに皇がそれを見て、ひょいっと取り上げた。

「何ビビってんだよ」

「だ、だって」

本当にありえない金額なんだもん。
世の男性に同情するわ。

皇が楽しそうに私を見る。

「こんなもんじゃねぇぜ?これから。結婚式なんてン百万、オプション一つで十万単位で値段が上がるし、新生活は何かと要り用だろ。マイホームは何千万、住宅ローンに出産費用、生活費、各種税金。車も買い替えだな、今のじゃチャイルドシートが積めない。養育費は子供1人に三千万だ。……まあせいぜい気をしっかり持てよ?」

「夢壊さないで下さいよぉお!」

でも、なんだか詳しくない?

そう疑問を述べた私に皇が事も無げに言った。


「そりゃ、まあこの歳になりゃ、周りから色々聞くだろ。その“責任重大”を背負う覚悟も出来たしな」

ん?と聞き流しかけて、私は硬直した。
いま、なんて?

「え、と、え?」
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