君の名を呼んで
皇が紙袋から小さな箱を取り出した。
パカッと開けば、そこにおさめられているのはダイヤの指輪。
キラキラと輝くそれは、今の私の気持ちみたいで。


「だからいい加減、お前も観念しやがれ。お前は一生、俺のものだ」


その指輪を、私の左手薬指にはめて。
皇は微笑んだ。

私は、うまく笑えなくて。


「もー……。
こんなプロポーズ、聞いたことないですよ……」


ポロリ、と零れた涙は、皇の唇が拭っていった。
彼は私の顔を覗き込んで、いつもみたいにニヤリと笑う。


「わかったら早く脱ぎやがれ。焦らすな、もう」

「何ですかそれ～。それに私まだ返事、してませんて……」


抗議はキスで埋め尽くされて。


「答えはイエスのみだって、言っただろ。それに返事なら、ずっと前に聞いてる」


……そうでした。


私は左手に光る指輪を見つめながら、ゆっくり、目を閉じた。
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