君の名を呼んで
『その企画なら、うちのタレントを使って下さい。必ずイメージぴったりの最高の仕事をしますから』

『けどねぇ、城ノ内君。もうアレは大手事務所のアイドルに決まってるんだよ。BNPさんは出来たばかりだし、焦ることないでしょ』

『一度見るだけでもお願い出来ませんか。実力は確実なんです』



「彼の一生懸命な姿を見て、真摯な姿を見て、自分が恥ずかしくなりました。それで、子役時代に私を守ってくれたマネージャーを思い出して、BNPへの就職を目指しました」


まさかそんな時を見られていたなんて。
雪姫がBNPに面接に来たのは、偶然じゃなかったのか。


俺の考えていたことを察して、雪姫が微笑む。


「私達、お互いがお互いの人生に影響していたのね」


たまに見せる、妙に落ち着いた、こいつらしくないーー色香のある顔で。


不覚にも、心臓が大きな音を立てた。



「城ノ内副社長はBNPに無くてはならない人です。
誰よりもタレント一人一人の事を考えて、彼らの魅力を引き出して、最高の仕事をさせてあげる。私はそんな彼を尊敬して、ここまでついてきました。皇が“コウ”であった時間も、私が子役であった時間も、今の私達に必要だったんです。

今の私達は、自分を誇れる。意味無くなんてないんです」


雪姫の言葉に、母も父も押し黙った。

こんなにもこの両親の真剣な顔を見たことなんてあっただろうか。
やっぱり、お前は凄いな。


「だから」


雪姫。
鈍感で、強情で、よく泣く馬鹿オンナだけれど。



「私を皇に出会わせて下さって、ありがとうございます」



お前を、愛してる。
< 253 / 282 >

この作品をシェア

pagetop