君の名を呼んで
エアリエルのショーで一度纏ったウェディングドレスを、桜里がプレゼントしてくれた。
あの日の姿が現実になる期待と、先へのちょっぴりよぎる不安。

今日までの私と何も変わらないようで、大きく変わる明日。


「だから、俺の言った通りだったでしょう」

真野社長が、クスリと微笑んだ。

「梶原ちゃんなら、アイツを目覚めさせることができるって」

そういえば、そうだった。

「まあ目覚めさせるどころか人生変える衝撃を与えたわけだけど」

真野社長は自分のことのように嬉しそうに語る。
それが、私達を思っていてくれたからだと気付いて、なんだかジーンときちゃって。

「ほんとに、ありがとうございます」

潤んだ瞳で笑えば、彼は焦って言った。

「ちょっと待って!梶原ちゃんを泣かせたなんてバレたら城ノ内に殺される」

「嬉し涙ですよ」

「それでもダメ。あいつ実は嫉妬深いから。梶原ちゃんを泣かせてもいいのは自分だけなんだってさ」

……そういえば、朔との騒ぎの時にもそんなこと言ってたっけ。

あの時は感激したけど、今は意味が違うからなあ。
どこまで俺様なのかしら。


「梶原ちゃん、気をつけてね。晴れて夫婦になったら、あいつ遠慮なく君を独占すると思うから」

「ええ~?」


そんなことあるんだろうか。
モテモテの彼に私が嫉妬することはいくらでもありそうだけど。


「甘いな、梶原ちゃんは」


社長の笑い声が、部屋に響いた。
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