君の名を呼んで
どうにか時間内に着いた区役所の窓口に、震える手で用紙を出したなら。
窓口のおねーさんは皇を真っ赤な顔でポーッと見つめた後、私が差し出した用紙を見て、あからさまに落胆した顔をした。
すみませんねぇ……。
後ろに居たおじさんが慌ててその人を押しのけ、上から下まで埋められた婚姻届を見て。
「おめでとうございます」と笑顔で言ってくれた。
私と皇はお礼を返して、二人で顔を見合わせる。
「紙切れ一枚に緊張し過ぎだ、馬鹿」
呆れた声で私の頭をクシャクシャにした皇だけど、そういう彼だってこうしてちゃんと一緒に出しに来てくれたわけだし……ねぇ?
区役所を出たところで、何だかいっぱいいっぱいになって皇の腕にしがみついた。
「私本当に、皇の奥さんになったんですよね」
結婚式がまだだから、今は紙切れ一枚、姓が変わっただけだけど
それでもやっぱり胸に込み上げるものがあって。
潤みそうになる瞳で皇を見上げた。
なんだか色々なことを思い出しちゃって、ギューっとなってしまう。
「……まだ、自覚出来ないなら自覚させてやるよ」
皇は相変わらずの口調だったけど、その目はいつもよりずっとずっと優しくて。
「俺の名前を呼べ、雪姫」
不意に皇がロングコートのフードを頭から被って、私を引き寄せた。
ファー付きのフードに半分隠された顔。
見惚れるほど素敵な笑みと共に、重ねられた唇。
「皇……」
私達は、交差点で密かにキスをした。
窓口のおねーさんは皇を真っ赤な顔でポーッと見つめた後、私が差し出した用紙を見て、あからさまに落胆した顔をした。
すみませんねぇ……。
後ろに居たおじさんが慌ててその人を押しのけ、上から下まで埋められた婚姻届を見て。
「おめでとうございます」と笑顔で言ってくれた。
私と皇はお礼を返して、二人で顔を見合わせる。
「紙切れ一枚に緊張し過ぎだ、馬鹿」
呆れた声で私の頭をクシャクシャにした皇だけど、そういう彼だってこうしてちゃんと一緒に出しに来てくれたわけだし……ねぇ?
区役所を出たところで、何だかいっぱいいっぱいになって皇の腕にしがみついた。
「私本当に、皇の奥さんになったんですよね」
結婚式がまだだから、今は紙切れ一枚、姓が変わっただけだけど
それでもやっぱり胸に込み上げるものがあって。
潤みそうになる瞳で皇を見上げた。
なんだか色々なことを思い出しちゃって、ギューっとなってしまう。
「……まだ、自覚出来ないなら自覚させてやるよ」
皇は相変わらずの口調だったけど、その目はいつもよりずっとずっと優しくて。
「俺の名前を呼べ、雪姫」
不意に皇がロングコートのフードを頭から被って、私を引き寄せた。
ファー付きのフードに半分隠された顔。
見惚れるほど素敵な笑みと共に、重ねられた唇。
「皇……」
私達は、交差点で密かにキスをした。