君の名を呼んで
私は彼を見つめ返して、口を開く。


「ねえ、もうここは私の一番お気に入りの場所じゃないんです」


皇は軽く目を見開いた。
構わずにそのまま続ける。


「今の私の、一番お気に入りの場所はあなたと住んでる家。あなたの傍なの」


ここ。

皇の隣。


「私も愛してる」


彼は私の言葉に微笑んだ。

「知ってる、馬鹿」


ゆっくりとその唇が重なる。


秘密の休憩時間。
陽だまりのなか。
大好きな人の傍で。

幸せなひとときに、私達はただ寄り添っていたーー。




fin.
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