君の名を呼んで
車はいつの間にか停められていたみたいで、そんなことすら気付かないくらい動揺してるのだと思い知る。

「雪姫、辛いならやめろ。俺にしなよ」

答えを返す間もなく。
伸びてきた指は私の顎をすくい上げて。

朔のキスは優しかった。

私の涙を拭ってくれるのは、多分この人だ。
朔ならきっと、大事にしてくれる。
私だけを、見てくれる。

……。

でも。


「ごめんなさい……」


私は朔の唇をそっと押さえて離れた。

「それでも、私は」


馬鹿だとわかってる。
呆れられても、軽蔑されても仕方ない。

でも、あのひとが すき。


言葉にならなかった言葉を、朔は聴きとってくれて。

「雪姫が幸せになるまで、俺は諦めないからな」

優しい微笑みを返してくれた……。
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