君の名を呼んで
*
ドラマのセット脇に作られたキャストの待機スペースには、いつも自然と人が集まるのに。
なぜか今、その場には俳優の朔と副社長が顔を突き合わせて座っていて、後ろに私が立つという形になっていた。
その不可思議な空気か、もしくは不機嫌そうに足を組んで座る副社長の迫力なのか、他のキャストやスタッフ達は遠巻きに私達を眺めるだけで、近寄ろうとしない。
な、なんなのこの緊迫感は。怖いよ~。
朔は車に乗り込んで城ノ内副社長を見た途端、まったく口を聞かなくなってしまっていた。
彼の機嫌の悪さは、多分私を想ってくれてのことだとは思うけど、今はそれも結構ですと言いたくなる。
すると突然朔が、台本を私に渡した。
「雪姫、ホン読み手伝って。次のシーン18から」
「え?う、うん」
機嫌直ったのかな?
私の視線にかまわず、彼は台詞を暗唱し始める。
私は相手役のところを読み始めた。
「『あんな男はやめろよ。俺ならお前を泣かせたりしない』」
「『修一……』」
シーン18はラブシーンだ。
なんだか恥ずかしい。
城ノ内副社長の視線を感じながら、私はなんとか台本を読んでいく。
ドラマのセット脇に作られたキャストの待機スペースには、いつも自然と人が集まるのに。
なぜか今、その場には俳優の朔と副社長が顔を突き合わせて座っていて、後ろに私が立つという形になっていた。
その不可思議な空気か、もしくは不機嫌そうに足を組んで座る副社長の迫力なのか、他のキャストやスタッフ達は遠巻きに私達を眺めるだけで、近寄ろうとしない。
な、なんなのこの緊迫感は。怖いよ~。
朔は車に乗り込んで城ノ内副社長を見た途端、まったく口を聞かなくなってしまっていた。
彼の機嫌の悪さは、多分私を想ってくれてのことだとは思うけど、今はそれも結構ですと言いたくなる。
すると突然朔が、台本を私に渡した。
「雪姫、ホン読み手伝って。次のシーン18から」
「え?う、うん」
機嫌直ったのかな?
私の視線にかまわず、彼は台詞を暗唱し始める。
私は相手役のところを読み始めた。
「『あんな男はやめろよ。俺ならお前を泣かせたりしない』」
「『修一……』」
シーン18はラブシーンだ。
なんだか恥ずかしい。
城ノ内副社長の視線を感じながら、私はなんとか台本を読んでいく。