君の名を呼んで
「……お前みたいな後腐れありまくりそうな女、セフレなんかにするわけねぇだろ」

低く響く、怒りに満ちた副社長の声。

「す、すみません。私なんかそんな価値もないですよね。もう、もう副社長には関わりませんから……っ」

もうボロボロと零れた涙で、副社長の表情も見えなくなって。
膝から力が抜けていく。

「……そうじゃねぇよ、馬鹿」

座り込みかけたのを、強い力で引き寄せられて。
私の身体は、副社長の腕の中に抱き締められた。

「お前みたいな面倒な女に、遊びで手を出せるか」

「……城ノ内副社長?」

セットの向こうから、朔のセリフが聞こえる。

「『俺を見ろよ』」

同時に同じセリフが、目の前の副社長から発せられた。

「『俺だけを見てろ』」


……え?

城ノ内副社長が真っ直ぐ私を見下ろしていた。
まるで、さっきの朔みたいに――。


「『好きだ』……雪姫」


そう紡いだ唇が、そのまま私に重なって。
深く深く、私を捕らえて放さない。


……いま何て?
何て言われた?


城ノ内副社長が、
私を、好き?


嘘ぉ。
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