君の名を呼んで
その必要はない
*
今日の私は城ノ内副社長とパーティーに来ていた。
あるベストセラーが映画化することになり、そのキャストに朔とすずが抜擢されたため。
制作発表と顔合わせを兼ねて開かれたパーティのため、会場になったホテルの宴会場には、たくさんの有名人やらお偉方が集まって、それぞれに歓談している。
原作者へ挨拶を終えて、一息ついた私に、副社長が笑った。
すずと朔はインタビューを受けているから、今のうちにちょっとだけ休憩。
「お前案外ビビリだよな」
「うぅ、胃が痛いです……」
その時、私をすり抜けて城ノ内副社長に飛びついた、黒髪の女性。
「皇!」
「舞華」
……舞華さん?
「私も出るのよ。よろしくね」
そう言う彼女は、真っ直ぐに副社長を見上げて。
キラキラした目でにっこり微笑んだ。
私なんて目に入らない様子。うーん、さすがだ。
「いっそのこと皇のプロダクションに入れてくれればいいのに」
「お前は俺相手だと甘ったれるから駄目」
その親しげな雰囲気は、やっぱり私には少しキツい。
目をそらしかけた、その時――。
「コウ……?コウじゃないか、モデルの」
不意に掛けられた声は、スーツの男性からのもの。
名刺を入れたネームプレートには、有名な出版社の名前があった。
「いや懐かしいな、昔君の載った雑誌を扱ったことが」
「――失礼ですが、人違いです」
冷たく遮って。
城ノ内副社長はハッキリわかるほど顔色を変えて、鋭い目線でそう返すと、身を翻した。
今日の私は城ノ内副社長とパーティーに来ていた。
あるベストセラーが映画化することになり、そのキャストに朔とすずが抜擢されたため。
制作発表と顔合わせを兼ねて開かれたパーティのため、会場になったホテルの宴会場には、たくさんの有名人やらお偉方が集まって、それぞれに歓談している。
原作者へ挨拶を終えて、一息ついた私に、副社長が笑った。
すずと朔はインタビューを受けているから、今のうちにちょっとだけ休憩。
「お前案外ビビリだよな」
「うぅ、胃が痛いです……」
その時、私をすり抜けて城ノ内副社長に飛びついた、黒髪の女性。
「皇!」
「舞華」
……舞華さん?
「私も出るのよ。よろしくね」
そう言う彼女は、真っ直ぐに副社長を見上げて。
キラキラした目でにっこり微笑んだ。
私なんて目に入らない様子。うーん、さすがだ。
「いっそのこと皇のプロダクションに入れてくれればいいのに」
「お前は俺相手だと甘ったれるから駄目」
その親しげな雰囲気は、やっぱり私には少しキツい。
目をそらしかけた、その時――。
「コウ……?コウじゃないか、モデルの」
不意に掛けられた声は、スーツの男性からのもの。
名刺を入れたネームプレートには、有名な出版社の名前があった。
「いや懐かしいな、昔君の載った雑誌を扱ったことが」
「――失礼ですが、人違いです」
冷たく遮って。
城ノ内副社長はハッキリわかるほど顔色を変えて、鋭い目線でそう返すと、身を翻した。