君の名を呼んで
「副社長……!?」
私は慌てて声を掛けるけれど、彼は振り向くこと無く出て行く。
「彼はコウだろう。モデルは辞めたのかね。もったいないな」
その様子に怪訝な顔でそう言う相手に、私はつい聞いてしまう。
「あの、そのコウを扱った雑誌って……」
彼は快く教えてくれた。
それならうちの会社にバックナンバーがあるかもしれない。
それだけ思い浮かべたところで、慌てて相手に頭を下げると、彼の後を追う。
真野社長が言ったように、“コウ”は彼にとって禁句なんだ。
名を呼ばれるだけじゃなく、その存在を思い出されて、あんな顔色が変わるほど。
私じゃ駄目なんだろうか。
その苦しみを、せめて少しでも聞かせてもらえないんだろうか。
欠片でも良い。
城ノ内副社長のことを、もっとちゃんと知りたい。
彼の心を聴かせて欲しい。
私にーー。
そして、私が見たものは。
会場の外、ホテルのロビーにあるソファに座り、組んだ手を額に押し当てて俯く彼の姿。
それにそっと寄り添い、彼を抱きしめる舞華さんの姿。
……ああ。
声にならない溜め息が、私の身体をすり抜けていった。
私は慌てて声を掛けるけれど、彼は振り向くこと無く出て行く。
「彼はコウだろう。モデルは辞めたのかね。もったいないな」
その様子に怪訝な顔でそう言う相手に、私はつい聞いてしまう。
「あの、そのコウを扱った雑誌って……」
彼は快く教えてくれた。
それならうちの会社にバックナンバーがあるかもしれない。
それだけ思い浮かべたところで、慌てて相手に頭を下げると、彼の後を追う。
真野社長が言ったように、“コウ”は彼にとって禁句なんだ。
名を呼ばれるだけじゃなく、その存在を思い出されて、あんな顔色が変わるほど。
私じゃ駄目なんだろうか。
その苦しみを、せめて少しでも聞かせてもらえないんだろうか。
欠片でも良い。
城ノ内副社長のことを、もっとちゃんと知りたい。
彼の心を聴かせて欲しい。
私にーー。
そして、私が見たものは。
会場の外、ホテルのロビーにあるソファに座り、組んだ手を額に押し当てて俯く彼の姿。
それにそっと寄り添い、彼を抱きしめる舞華さんの姿。
……ああ。
声にならない溜め息が、私の身体をすり抜けていった。