君の名を呼んで
そう口にした彼の瞳は冷酷そのもので。
私は必死で言葉を繋ごうとする。

でも。

「聞いて、下さい……!」

「その必要はない。出ていけ」

伸ばした手は、振り払われた。
そのまま玄関の扉に向かって突き飛ばされる。

「……っ!!」

倒れ込んでしまった私に構うことなく、城ノ内副社長は全身で私を拒絶していた。


――届かない。

何も、届かない。


絶望に、目の前が暗くなって、私は静かに身を起こした。



玄関の扉を閉める直前に見たものは、
拳で壁をガン、と殴りつける彼の姿だった。
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