君の名を呼んで
どうしよう。どうすればいい?
BNPは私の知る限りではこんな営業なんてさせない。
いつも真野社長や城ノ内副社長が上手くあしらってくれていたんだ。


私は救いを求めて一瞬、城ノ内副社長を見た。
けれど、視線が合ったと思う前に逸らされた瞳に、身体が冷たくなるのを感じる。

「……すぐ、行くから」

私のせいだ。
舞華さんを甘く見てた。
すずがあんなに仕事をしたいと焦っていたのに、ちゃんとわかってやれてなかった。
だからこんなつけ込まれるような羽目になったんだ。

全部私のせい。


城ノ内副社長には、頼れない。


「……っ」


私は携帯を切ると、一人で会社を飛び出した――。
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