君の名を呼んで
これは非売品
*
「雪姫ちゃんっ」
都心の高級ホテル。
私には縁のない、キラキラした場所。なのにちっとも嬉しくもワクワクもしない。
携帯を片手にロビーでウロウロしていたすずは、私を見つけていまにも泣きそうな顔で駆け寄ってきた。
「トイレとか言って時間稼ぎしたけど、良かったの?」
「すず、先に帰りなさい。一人で帰れるよね」
諭すように言えば、すずは目を見開いた。
「だって、雪姫ちゃん」
「大丈夫だから。私に任せて」
微笑む余裕は無かったけれど、まっすぐすずを見つめて言えば、彼女はおずおずと頷いてホテルを出て行った。
息を吸って、足を踏み出す。
彼女達が食事をしていたというレストランへ行くと、舞華さんとプロデューサーが奥の席に居るのが見えた。
談笑しているそちらへ近付く。
「申し訳ありません。藤城すずのマネージャーで、梶原と申します。
すずは門限があるので帰しました。まだ未成年ですので」
固くなりそうな声を意識して抑えて、こちらを見上げるプロデューサーへそう伝えれば、彼は不満そうに私を見た。
「はあ?僕はすずちゃんが会いたがってるって聞いて、わざわざ時間を空けたんだけどね。ふーん、BNPさんはそういう方針なの?」
私は一瞬舞華さんを見た。
彼女はニヤリと私を嘲笑う。
それでこの事態はやっぱり彼女の策略なのだと確信した。
すずまで巻き込んで、真意は私への嫌がらせ?
会社――城ノ内副社長にまで害が及ぶかもしれないのに。
「雪姫ちゃんっ」
都心の高級ホテル。
私には縁のない、キラキラした場所。なのにちっとも嬉しくもワクワクもしない。
携帯を片手にロビーでウロウロしていたすずは、私を見つけていまにも泣きそうな顔で駆け寄ってきた。
「トイレとか言って時間稼ぎしたけど、良かったの?」
「すず、先に帰りなさい。一人で帰れるよね」
諭すように言えば、すずは目を見開いた。
「だって、雪姫ちゃん」
「大丈夫だから。私に任せて」
微笑む余裕は無かったけれど、まっすぐすずを見つめて言えば、彼女はおずおずと頷いてホテルを出て行った。
息を吸って、足を踏み出す。
彼女達が食事をしていたというレストランへ行くと、舞華さんとプロデューサーが奥の席に居るのが見えた。
談笑しているそちらへ近付く。
「申し訳ありません。藤城すずのマネージャーで、梶原と申します。
すずは門限があるので帰しました。まだ未成年ですので」
固くなりそうな声を意識して抑えて、こちらを見上げるプロデューサーへそう伝えれば、彼は不満そうに私を見た。
「はあ?僕はすずちゃんが会いたがってるって聞いて、わざわざ時間を空けたんだけどね。ふーん、BNPさんはそういう方針なの?」
私は一瞬舞華さんを見た。
彼女はニヤリと私を嘲笑う。
それでこの事態はやっぱり彼女の策略なのだと確信した。
すずまで巻き込んで、真意は私への嫌がらせ?
会社――城ノ内副社長にまで害が及ぶかもしれないのに。