せんせい、知ってます。
せんせい、自己紹介。
「ねぇねぇ。新しい副担くるんでしょ!?すごい楽しみすぎるんだけど!」
私の後ろの席で朝からハイテンションでしゃべりかけてきたのは、友人もとい親友の春乃。
私も負けじとハイテンションで返す。
「イケメンだといいなー!」
「だねーっ!」
春乃と手を取り合い、都合のいい妄想をする。
こんなに舞い上がるのも無理はない。
何しろ前の副担は、宿題は多いは校則には厳しいは、そして極めつけにセクハラをしていた変態教師だった。
退職させられたのも、女子更衣室に盗聴器とビデオカメラを隠したことが原因。
あの変態教師以下の人が来るとは思えない。
「朝からうるせーな。そんな都合よくイケメン先生なんて来るわけないだろ」
「なになになっちゃん。ヤキモチ?」
「その口に接着剤つけてやろうか?あとなっちゃんって呼ぶな!」
隣席に座った、なっちゃんこと夕間夏希。
私となっちゃんは幼馴染みで、昔からなっちゃんと呼んでいる。
「男の嫉妬は醜いぜー?」
「違うっての!」
後からわかったことだけど、春乃となっちゃんはいとこらしい。
なっちゃんは、その、150cmをやっと超えた私が言えた口じゃないけど、背が小さい。
春乃が163cmで、それと同じだと言うから男子の中では小さいはずだ。
「私はちっさいなっちゃんでも好きだよー」
「いきなり失礼だな!」
「よかったな。あたしは無理。あたしより5cmは高くないと」
「長身イケメン先生が来るといいな!」
あちゃー。
春乃はもうちょっとやさしくならないと。
これは私の勝手な予想だけど、なっちゃんは春乃のことが好きだと思うんだよね。
今見事に玉砕しちゃったけど。
それから春乃となっちゃんと三人で理想の先生について語った。
春乃は長身イケメン先生、なっちゃんは宿題が少ない美人先生。
私はとりあえずあの変態教師以下でなければ誰でもいい。
話の盛り上がりが下がってきはじめたちょうどその時、予鈴が鳴った。
「おらおら席つけー!」
出席簿を手に持ち、がに股で教室に入ってきたのは担任のケイコ先生。
まだ若いけど、女子からも男子からも支持されている先生だ。
私もケイコ先生の授業は好き。
「お前ら騒ぐなよ。先週から言ってる通り元副担の変態野郎に代わり、新しい副担が入る」
ケイコ先生は教師なのに、あの変態教師を変態野郎呼ばわりしてしまう。
そんなサバサバしたところも好きだ。
「よし、準備はいいな。そんじゃ先生。入ってきてちょうだいな」