溺れる蝶
芹沢先生の担当は数学だそうで、
私の担当係だった
「数学担当はー…岸川か。岸川、芹沢先生に数学準備室案内してくれ」
はぁ?それって先生の仕事じゃないの?
「俺はいそがしーんだよ」
嘘付け
結局私が案内するはめに
皆はいーなぁっていう顔するけど
正直2人きりなんてどーしたらいいかわかんないし
準備室までの廊下を無言で歩く私たち
隣を見ると背の高い芹沢先生
近くで見るとますますかっこいいなぁ
「あ、ここです」
数学準備室はあまり使われてないからすこし埃っぽい
「窓、空けときますね」
今日から先生はここを使うらしいし、換気はしといたほうがいいだろう
「どうも」
「じゃあこれで…」
失礼しますといいかけたとき、
「お前、名前なんてゆーの?」
え?
「岸川、玲央です」
「ふーん。んじゃこれからよろしくな。玲央」
どきっ
ガチャンっ
ドアが閉まると同時に速くなる鼓動
玲央ってよばれた!?
あの低くて妖艶な声で呼ばれるだけで
身体の奥がゾクゾクする