冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




「結婚式は、瑠依の為に、とことん派手に決めてやるからな」

「いえいえ、とことん地味でいいから」

「は?何か言ったか?」

にやりと笑う顔からは固い決意が見える。

普通、男って結婚式を面倒くさがったり簡単にしようと投げやりになったりするものだと、既に結婚をした友達を見てそう思っていたけれど。

紬さんに限っては、そんな世の中の当たり前は通用しないらしい。

「お色直しは少なくとも3回はしたいし、オプション全てつけてもいいな。あ、ゴンドラに乗っておりてくるか?」

「ゴ、ゴンドラ?」

「ドライアイスめいっぱい広げて幻想的な照明の中おりてくるなんて、いいよな。
非現実的な世界を楽しめるなんて、最初で最後だし」

「非現実的すぎるでしょ。私、そんなに派手じゃなくていい。
おじい様とおばあ様を納得させればそれでいいんじゃないの?」

「は?誰の為でもない、結婚式は花嫁のためのものだろ?
瑠依をめいっぱい綺麗な主役にして、存分に豪華な披露宴。これに限るだろ」

「……はあ」

力強く言い切って頷く紬さんの口調の強さに気圧されて、私は何も言えなくなった。



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