冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
出会って以来、何度も私を幸せにすると言ってくれ、勢いと、無理矢理にも近い展開の中でここまで私を引っ張ってきてくれた。
そんな紬さんからは、これまで余裕しか感じていなかったけれど、何だか今の言葉には、小さな不安が混じっているように思えた。
「瑠依……」
小さな吐息にまじる私の名前を、かみしめるように呟いて。
「他の誰でもない、俺が、幸せにするから、安心しろ」
私達の近くに立っているホテルの人がその言葉に顔を赤くしているというのに、紬さんはそんな事は全く意に介さない。
それどころか、ぎゅっと私を抱きしめた。
抱きしめられる度、その温かさに慣らされて。
私はどんどん紬さんから離れられなくなっていった。