冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
その後、紬さんをはじめ、結婚式に向けて積極的に動く家族に振り回される日々を過ごし。
結婚式まであと三日となった木曜日。
私は結婚休暇中の仕事を周囲に振り分ける作業に追われ、朝から忙しくしていた。
明日の金曜日から10日間、お休みをいただく事になっていて、取引先に連絡を入れたりと昼食をとる時間もなく、慌ただしく仕事に励んでいた。
15時を過ぎた頃、どうにか仕事にも目途がたち、休憩コーナーでコーヒーを飲んでいると、同期の梢がやってきた。
いつも穏やかでおとなしい彼女だけど、今日は更に儚げで緊張しているようにも見えた。
私の隣に座った彼女は、どこか泣き出しそうな顔を私に向けると
「瑠依、新郎側の受付って、紬さんの友達だよね?」
「え?あー、そうだよ。春木さんと山口さん。昨日会ったけど、人当たりのいい男前だよ」
「う……ん。恵と私でちゃんとこなせるかなあ?私達みたいなのんびりよりも、もっとしっかりしている人を受付にお願いした方が、いいと思う」
俯き、小さな声で呟く梢に、少し申し訳なく感じる。
披露宴での受付がよっぽど重荷で不安らしい。