冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
ここまで緊張して嫌がる彼女をどうしても受付に据える必要はないってわかっているし、他に頼める友達もいるのは確かだけど、彼女を受付にというのは、春木さんからのお願いだから今更変更は不可なのだ。
以前私と一緒に食事をしていた梢を偶然同じ店にいた春木さんが見かけて一目ぼれ。
是非とも接点が欲しいという熱意に負けて、とりあえず自然な出会いの演出ってことで、二人を受付に据えた。
かなりの人数となってしまった披露宴だから、二人ではスムーズに受付業務を進められないということで、それぞれ一人ずつ友人を追加したけれど、その友達、恵と山口さんも、春木さんの思いを伝えられていて、協力体制は完璧。
私の披露宴での縁がどうなるかは春木さんの腕次第だけど、そんな彼のうきうきした表情を見せられて、嬉しい反面、私は何だか複雑だ。
本来なら、私は幸せいっぱいの花嫁なのに、私にここまでの笑顔が浮かぶことはない。
けれど、春木さんは大きな笑顔でその日を楽しみにしている。
一方、私と言えば、既に夫となった紬さんの気持ちがつかみきれないままずるずると結婚式の準備を進めている。
確かに紬さんは私を大切にしてくれるし、結婚式の準備も必要以上に積極的。
春木さんの生き生きとした様子を見せられて以来、自分との気持ちの落差に気持ちはさらに落ち込み、目の前に迫った結婚式に、ため息ばかりの自分が切なくて。
そんな自分をもてあましている。