冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「明日はいくつかの打ち合わせと必要な書類にサインをいただく程度ですので、少しは体を休めていただけるかと思います」
「わかった。午後からの出社で大丈夫か?」
「そうですね。13時から営業部長が報告に来られる予定ですので12時頃お迎えにあがります」
「ああ、頼む」
助手席に座る秘書の加賀に頷いて、はっと思い出す。
「そう言えば、おやじが瑠依に渡したいものがあるから明日にでも連れて来いって言ってたな」
「社長が、ですか?」
「ああ。俺が忙しくて同席が無理でも、瑠依には直接渡したいものがあるから会社でも家にでも連れてこいってしつこく何度もメールを送ってきたんだ。何か心あたりあるか?」
「さあ。先日社長にお会いした時には何もおっしゃってませんでしたが。
相当瑠依様の事をお気に入りのようですから、何かプレゼントでも用意されてるんじゃないですか?」
加賀の言葉にとりあえず頷きながらも、瑠依をかなり気に入っているおやじのことが頭に浮かんで苦笑いが浮かぶ。
瑠依へのプレゼントを買ったとすれば、それを口実に直接彼女を呼び出して猫かわいがりしているはずだ。
自分には男しか恵まれなかったせいか、瑠依を実の娘のように溺愛し、
『紬に飽きて別れたとしても、俺にはずっと会いに来てくれるだろ?』
真面目な顔で瑠依にそう詰め寄って、彼女を茫然とさせていたのはつい最近の事。