冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
俺を抜きにして、親父と母と瑠依の三人で食事に出かける事も頻繁にあるらしいし、瑠依が喜ぶだろうと言っては靴やら洋服やらかなりのプレゼントを送りつけてきてはそれを口実に電話をかけてくる。
そんな日常が続いている中で、たかだかプレゼントごときで瑠依を呼び出すなんて思えない、それに俺にわざわざ頼むなんてことをするはずがない。
「何を考えてるんだ、あのおやじ」
思わず低い声で唸っていると、半年前まで親父の秘書をしていた加賀が小さく笑い声をあげた。
「親子で瑠依様を取り合って、ほほえましいですね」
「取り合うなんてもんじゃない。仕事の大部分を俺に投げた親父の方が瑠依と一緒に過ごしてるよ」
「そんなに拗ねないでください。もうすぐ二人きりの新婚旅行が控えてるんですから、今は社長に瑠依様をお願いしておいたらどうですか?」
「ふん。旅行から帰ってきても、あのくそおやじが瑠依を放っておくとは思えない。
何かと理由をつけては呼び出すはずだ」
自分の妻を溺愛している姿を小さな頃から見せつけられているせいか、母さん以外の女、まあ息子の嫁とはいえ、瑠依を気に入ってせっせと世話をしている姿は妙に新鮮ではあるけれど。
「俺だってなかなか瑠依と一緒にいられないのに、気をつかえよな」
社用車の後部座席に体を預け、ふっとため息を吐く。
瑠依と入籍を済ませたあと、本格的に会社の中枢に入り経営の勉強を始めた俺は、役職こそまだないがその仕事量の多さゆえに秘書が付き社用車で送迎されるようになった。
来年の株主総会で俺が専務に就任する議案が提出されるらしいが、社長の息子というだけで、社内での扱いは既に取締役レベル。