冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う



それを嫌って一般社員として仕事に励んできたが、瑠依との結婚が決まり、親父が「隠居する」と宣言したおかげで俺は会社の運命と一蓮托生。

腰を据えて会社の経営に身を投じなければならなくなった。

いつかはそうなるだろうと覚悟していたとはいっても、親父の急な気持ちの変化は予想外で、悩みも多かった。

そんな俺を気遣った瑠依が、「おじい様を見ていたから、社長の大変さはよくわかってる。だから、ちゃんと支えてあげるよ」と言って仕事を辞める決断をしてくれた。

俺よりも大変な子供時代を過ごし、会社の犠牲になったはずの瑠依は、そのことによって強くなり、いい女に成長していた。

「ここまで惚れるとは予想外だな」

ふと口を突いて出たのは、間違いなく本音だ。

ばあさんから見合いの話を持ってこられて以来、密かに探っていた瑠依の身辺と過去によって、既に俺の中には瑠依の居場所ができあがっている。

断る理由を見つける為に探っていたにも関わらず、俺の気持ちは徐々に瑠依に傾き、離れられなくなった。

それが愛情からではなく同情から始まったものだということは否定しないが、瑠依を一目見た瞬間から、同情では済ませられない甘い感情が大きくなっていた。

とっくに、俺は瑠依に惚れている。



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