冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
けれど。
お見合いの席に現れた瑠依はかたくなに俺を拒み、過去の初恋の残骸が役立つことはなかった。
瑠依にとっての結婚は、自分が望む未来を手に入れる大切な手段。
愛し愛される人と寄り添い、愛を大きく育てながら真実の幸せを手に入れる。
そんな希望を持っていることは、瑠依を調べている一年の中でわかっていたけれど、初対面の俺にあれほど反抗的な態度をとるとは予想外で。
俺が瑠依を大切にし、幸せにしようとする気持ちだけで結婚してはいけないのだろうかと悩んだのも確かだ。
けれど、瑠依を見つめ続けた一年の間に、俺が瑠依を諦めるという選択肢はその時点でなくなっていた。
瑠依が俺と結婚したくなくても、ゆっくりと俺の気持ちを注いでいきながら気持ちを重ね、いずれ幸せになれればいいと、そうできると、俺は腹をくくった。
そして、瑠依の身の安全を確保するというこの結婚の本来の目的を彼女が知る日は必ず来る。
大昔の恋を昇華させるため、ただそれだけではないこの結婚の意味を瑠依が知った時に、それでも彼女が俺の側から離れられないと。
そう思える未来を築くために、俺が精いっぱい瑠依を大切にしていこうと決めている。
幼い子供には必要のない苦しみをあじわってきた瑠依に待ち受ける未来が、決して新たな苦しみに満ちたものではないように、俺は彼女の側で支える。
そんな心づもりで臨んだ見合い当日に現れた瑠依は、一目で乗り気ではないとわかるほど不機嫌で、俺に向けられる視線にも警戒心が溢れていた。
瑠依が簡単に結婚に同意するとは思っていなかったとはいえ、露骨に俺を拒否する様子には落ち込んだ。
釣書にすら目を通していないなんて、予想外だ。